(これは2016年に書いた記事をリライトしたものです)


ラグを織る事は
モロッコの田舎の女性にとっては大事な仕事。
彼女たちは字が読めない人も多く、
各家庭でコツコツとラグを織り、
業者に買い取ってもらう事で生活費の足しにしています。

逆に言うと彼女たちにとっては
ラグ織りくらいしか仕事はありません。

そんな中で作られるラグは、
見るものを魅了するセンスに溢れ、
とてもユニーク。

なかなか作業している所を見れる機会がない織子さんたち。
一体どんな人たちがどんな風にラグ作りをしているのか、
普段の旅行では決して行けないような場所に潜入し、
彼女たちの実像を見てまいりました。








モロッコのラグ織りが盛んなワルザザート近郊。
大都市のあるモロッコ北部から

険しいアトラス山脈を超えたこの辺は、
サハラ砂漠に続く街道の入り口にあたり、
乾いた荒野が広がります。





こんな感じの場所をひたすら走ります。

まず最初に訪れたのはワルザザートの伝統工芸館。
その中にラグのアソシエーション(協同組合)があります。






ラグはモロッコの一般家庭で織られることが多いですが、
いくつかの中間業者を経るにつれて価格がつり上がり、
大都市のラグ店などで販売される頃には高額になります。

にも関わらず、織り手の女性には
労働に見合わない安い賃金しか支払われません。

そういった女性の立場を守るためにも、
協同組合や女性協会などがあり、
そこで織られたラグに対しては、
織子さんにも順当な報酬が支払われます。




伝統工芸館の中の協同組合↑


ワルザザートの伝統工芸館では、
ラグが売れた値段のうちの好きなだけ
織子さんに取り分があるシステムとなっていました。

ここのラグの価格はノット数(織り目の密度)
によって決まっているようです。

価格表がありました。





価格表はオーダー制作ラグのものですが、
すでに完成しているラグもたくさん販売しています。


 

値段交渉が当たり前、
しかも高額をふっかけてくるのが
当たり前のモロッコのラグ屋で、

正当な価格で販売してくれるのは嬉しいですね。

さて、次は実際織っている作業場を見学させてもらいました。






このように織り機がいくつもありました。
各々がここでラグを織ります。

立派な作業場です。





せっせと織っています。

アフニフ(平織り)は目が細かいので
一日4時間くらいしか作業できないそうです。
その他のラグは一日8時間くらい作業するそうです。

ワルザザートを後にし、
こちらもラグ作りの盛んなタズナフトという街の近郊へ。

何もない大地に小さな村があり、
そこにラグの女性協会がありました。

「AFLUSS-NAFLSS(アフォース ナフォース)=手から手へ」
という名前のついたその女性協会は、
以前日本人女性がラグの監修をしていたらしく、
そこのラグは日本人好みの淡い色合いのものが多かったです。

形もきちっとしていて、
日本人の指導によるものなのかな?と思いました。





女性協会のラグ。
優しい中間色はモロッコでは珍しい。




バッグも作っているみたい。(可愛い♡)


こじんまりとした作業場には
可愛らしいラグがいっぱいでした。




女性協会の織子さんと♪



次は個人のお宅でラグを織っている織子さんに会いに行きました。


一人目の方はまだ20代後半から30代前半くらいの若い方。
(でも中学生くらいのお子さんがいた)

可愛らしくてはつらつとした印象でした。

この織子さんにいくつかインタビューをしてみました。


「150×100cmくらいのラグを一枚作るのに
どのくらい時間がかかるんですか?」


織子さん
「一ヶ月くらいですね。」


「それで賃金はどのくらい?」


織子さん
「絨毯業者がからむととても少ないです。
日給100円くらいかな。」



「生活がどのようになってくれたら嬉しいですか?」


織子さん
「一つはお金を稼ぎたいですね。
もう一つは伝統的な絨毯作りが
発展していくと嬉しいかな。

今までなかった新しいこと、
他の人にできない事ができるようになるのは
嬉しいことですね。」



「毎日楽しいですか?」


織子さん
「難しいモチーフを織るのは大変だけど(苦笑)、
簡単なモチーフのラグを作るのは楽しい!」



「モロッコのラグ作りにおいて、
日本人の手が入ることをどう思いますか?」


織子さん
「メズィヤーン!(良いことです!)
でも日本人の好きな柄はシンプルですね。
モロッコの伝統的なものとはちょっと違うかな。」



「なるほど。
ではどんな点がラグ作りで難しいですか?」


織子さん
「横目をきれいに真っ直ぐ作るのが難しい。
常に横にピンと張っていないと
丸まってきてしまうので。」



「そうなんですね。
では自分のオリジナリティを
出している点はあるのでしょうか?」


織子さん
「フリンジを三つ編みみたいに編んでみたり、
ちょっとアレンジしています。」



「最後にモロッコのラグ作りにおいて
思うことはありますか?」


織子さん
「もっと仕事を下さい!
もっといっぱいラグを織って、
もっと勉強したい!
上手になりたいです!」


正直、このインタビューでの
織子さんの反応は意外でした。

私はもっと切羽詰まった感じを想像していたのです。

しかし彼女は決して裕福とは言えない生活でしょうが、
とても生き生きと前向きな女性でした。

ただ、こういう前向きな女性がいる一方で、
女性の社会進出を快く思わない男性もいるそうです。

まだまだ問題はあるようです。

もう一人、別の織子さん宅を訪れました。

こちらはわりとベテランの織子さんのようで、
私がいた時にちょうどご近所に住む女性が手習いにやって来ました。

私にも「教えるからやってごらんなさい。」と、
そのご近所さん。

ガイド曰く、彼女のレベルはまだまだだそうだけど、
自分が覚えた技術を私に教えるのがとても嬉しそうでした。

勉強したり、
自分を向上させるチャンスに恵まれている日本では
あまり考えられないですが、
勉強したり向上することは本来とても贅沢で、
みんなそれを望むものなのだろうと思いました。





これは毛足のあるタイプのラグ。
一目一目短い毛糸を結びつけていく作業。
気が遠くなる・・。

こんな作業を彼女たちは日常的にやっています。

遠い国の言葉も文化もまったく日本とは異なる彼女たち。

でも、しっかりと前を向いて明るい彼女たちに、
何だか自分が励まされているような気持ちになりました。

ボランティアとか助けるとか言うとおこがましい。

共に良い方向に進んでいける
関係性が築けたらいいなと思いました。




ラグの素材になる毛糸を提供してくれる羊さんたち。



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