モロッコ風景


モロッコ旅行記Season1 <5日目>「アイト・ベン・ハドゥ」

モロッコ旅行記Season1 <5日目>「アイト・ベン・ハドゥ」


モロッコの旅5 「アイト・ベン・ハッドゥ」 ~噛み合わない思い~


トドラ渓谷




朝、4時起き。(早っ!)

サンライズのらくだツアーに参加するためだ。



今朝の参加者は3人。

昨日すれ違った日本人カップルと私。

昨日のディナーの時、隣の席に座っていたので、少し話をした。

同じホテルに泊まっていたようだ。



最初暗くてよくわからなかったが、「ラクダハラクダ」と言っていたので、

きのうと同じおじさんだとわかった。



早朝の砂漠は思いのほか寒い。

コットンブラウスの上にフリースを着ていたが、凍えそうだ。



うっすら周りが明るくなってきた。

白い月が砂漠の上に浮かんでとてもきれい。







昨日とは違うポイントでらくだを降り、見晴らしの良い所まで頑張って足で登った。

冷たい風が容赦なく体温を奪っていき、寒さで手がしびれてくる。



おじさんがカップルに向かって丘の向こう側を指さし、

「アッチ アルジェリア コワイ」と言っていた。

隣国のモロッコでもアルジェリアに対してはこういう気持ちなのだなと思った。



しばらく待ってやっと日が出てきた。

日が出ると寒さも少し和らいだ気がする。

太陽ってありがたい。

日の出は雲もかからずきれいに見えた。






↑ご来光~。



ホテルに戻って朝食。

すでにアハメッドが迎えに来ていたので急いで食べる。



ホテルのスタッフは若いにーちゃんが多かったが、

私が食べていると「ココスワッテイイ?」と、隣に座ってくる。

「いいけど、ガイドが待ってるからもう行くよ。」と言うと、

「ダイジョブダイジョブ」と、ちょっとチャラい。

用事があったのか「マッテテネ」とどこかに行ってしまったけど、

待ってる時間もなかったので、さっさとチェックアウトしてしまった。



4WDに乗り込もうとした時、ホテルの敷地から

日本人カップルの女性の方がこちらに向かって手を振っていた。

私も「バイバーイ!」と手を振って、メルズーガを後にした。



エルフードでまたイエローワゴンに乗り換える。

今日も長いドライブだ。





↑エルフード近くの町。アフリカらしい感じ。



ある町にさしかかった時、アハメッドが「ベルベルハウスに行くか?」と聞いてきた。

ベルベル人というのは、昔からこの辺りに住む土着の民族で、

その家を再現したものがベルベルハウスだと言う。

「行く!」と元気に答え、ベルベルハウスへ。



民族衣装を着たベルベル人のおじさんが迎えてくれて、ミントティーを入れてくれた。

「ここに座ってくつろいでって!」というので、のんびりしていると。

色とりどりのベルベル絨毯を見せてくれた。

それも何枚も何枚も。

そして「安くなってるから!」という。

あれ?買わせるためにここに来たの?



アハメッドの方を見ると、化石の時は止めてくれたのに黙って見ている。



正直、絨毯は欲しくなかったし、いったいいくらするのかわからなかったので、

ある程度話を聞いた所で「ノーサンクス!」と断った。

そうするとおじさんは他の部屋にも他の物があるから見てってと言い、

別のスタッフが別の部屋でいろんなモロッコ雑貨を見せようとしてきた。

「売りつけられる!」と思った私は全力で「ノー!サンキュー!」と言い、

半ば不機嫌な感じで店を出てしまった。



店のスタッフは「ジャポネーゼ、ワカラナイ」と言っていたが、

私もこの人達がどういうつもりなのかわからなかった。



気を取り直し、「じゃぁ行こうか」と車に乗り、この町を出た。



途中ぽこぽこ小さな山のようなものがいくつも見える場所に来た。

「これは ido」だと言う。


このあたりの家庭ではいくつか井戸を持っていて、それがこんなに沢山。

深さは深いもので80メートル。

その中の一つを覗き込んでみる。

小石を投げ込んでみるとしばらくして「コツン」と音がする。

でも、これは枯れ井戸のようだ。









↑無数の井戸が果てしなく並ぶ



またしばらく行くと何かアハメッドが説明を始めたが、英語が全然わからず、

「?」という顔をしていたら「Understand?」と言うので「No…」と言うと、

「オー マイ ゴッド、けっこうゆっくり喋っているんだけどなぁ」と言われ、

思わず「Sorry」と謝る。



結局の所、らくだに注意のめずらしい標識の事を言っていた。

この標識はここにしかないらしい。







途中の高台に車を停め、集落を指差し「Look」とアハメッドが言った。

昔、ここは奴隷として連れて来られた黒人達の町だったらしい。

今ではアメリカの黒人は自由にジャズを演奏したり聴いたりできるけど、

前はできなかったそうだ。

アメリカの黒人の先祖はこの辺りの黒人で、

この土地の人が奏でるリズムはジャズのリズムとよく似ているらしい。

アフリカ、そんな歴史がある所だ。





↑集落を望みながら悲しい歴史を思う。



そこからはしばらく単調な景色が続き、

朝も早かったので寝てしまった。



気がつくと周りは赤茶けた岩に囲まれた道。

ランチ予定のトドラ渓谷が近いっぽい。

アハメッドが「Did you sleep?」と聞いてきたので、「ねた。」と答えた。



トドラはスペイン人に人気の観光スポットらしく、

きれいな川沿いの道をスペイン人の旅行客がぞろぞろ歩いていた。



アハメッドが「あなたも歩いてみる?」と笑いながら言ってきたけど、

冗談だと思ったのと外が暑そうだったので「いや、いい。」と断った。

しばらく進むとまた「ランチの場所がもうすぐだから、そこまで歩いておいで。

ちゃんとフォローしてるから。」と言うので車を降りて川沿いを歩いた。

思ったより暑くなく、風と日差しが心地よい。





↑大迫力のトドラ渓谷。





↑川の中を四駆が走る。楽しそう♪



今にも崩れ落ちてきそうな巨大な岩と、何とも清らかな川を眺め、

ランチの場所に到着。

オープンエアの席でとても気持ちがよい。



スタッフが忙しそうで料理が出てくるまで時間がかかったので、

ガイドブックに載っていたアラビア語の「カン メズヤーン」(=おいしかったです)

という言葉を覚えてみる。

ランチが終わったらアハメッドに言ってみよう。





↑ケフタ(ミートボール)タジン。アップルサイダー「POMS」とともに。



ゆっくりとランチをし、アハメッドが待っている所に行って「I finish」というと、

早速「カン メズヤーン」と言ってみた。

でも発音が悪いみたいで「ん?」って感じで全く通じず、「アラビア語の勉強をしていた」と、

ガイドブックを見せたら、「あぁ、カンメズィヤーン」と、正しい発音を教えてもらった。

「カン」は食事という意味で「メズィヤーン」は「GOOD」という意味らしい。

「メズィヤーン」はいろんな場面で使える言葉だ。



ランチが終わってまた道を走っていったのだが、アハメッドのトーンがちょっと重い気がした。

気のせいかな?とあまり気にしないようにしていたら、

「あなたはさっきのベルベルハウスで楽しくなさそうに見えたけど、どうして?」と聞かれた。

あぁ、と思い「私はもっとミュージアムみたいな所だと思っていた。」と言った。

アハメッドは「あなたは高額なカーペットを売りつけられると思って怖がっていたでしょう?

せっかく素晴らしいカーペットを見せてあげようと思ったのにNO!NO!ってあなたは言った。」

「あそこは手頃な値段で良質なカーペットが買える場所で、良心的な店だっだんだよ。」と、

ちょっと怒っているようだった。



どうやらちゃんとした協同組合兼工芸館のような場所だったっぽく、

確かにハナから否定して拒絶モード全開だったのは、失礼だったかもしれない。

でも、だったら最初に価格の事は言って欲しかったし、

カーペットは正直あまり興味ないし欲しくないのだ。

それを角が立たないように伝えるには英語がそれほどできない私には難しかった。



それと、トドラで最初に歩かなかった事や途中で寝てしまった事も不満だったようだ。

「せっかくモロッコまで来たんだから、もっと楽しんで欲しいし、

あなたが楽しくないと私も楽しくない。」と言う。

それも正直早起きだったので疲れていた事もあったし、

私はのんびり景色を見ているだけでもちゃんと楽しんでいるのだ。

普段からこういうテンションなんだけど、

アハメッドには私がつまらなさそうにしているように見えたらしい。

でも、それを言葉でどう伝えていいのかわからない。



「今日は朝4時起きで正直ちょっと疲れているんだ」とだけ告げた。

「それはわかってるよ、でももっとエンジョイして!」とアハメッドは言った。

とりあえず「I understand」と答えた。



日本人はこういう時も黙っているけど、さすが外国人、はっきり物を言う。



ちょっと気まずい空気を消すように今度はアハメッドが

「じゃぁ、1から10までの数をアラビア語で教えるから、日本語での言い方を教えて!」と言う。

「Good idea!」と私も乗った。

「ワヘッド ジュルージュ ザラーザ アルバン カムサ

 シッツァ セヴァ サマーニア ジージャ アシュラン」

これがアラビア語の1~10。

発音も難しいが、とても覚えにくい。



対して日本語。

「イチ ニ サンは(Sun=太陽) ヨン ゴ(Go)

 ロク(Rock) ナナ ハチ キュー(Q) ジュー」

発音は難しそうだったが、わりとすんなり覚えたようだった。

「You are good teacher」とアハメッド。二人で「ハハハ」と笑った。



ダデス渓谷に到着。

ここはバラの産地でローズショップに寄る予定。

サンテグジュペリの「星の王子様」の中で、サハラ砂漠を彷徨っていた王子様が、

沢山のバラの咲く庭に足を踏み入れる場面があるのだが(←この場面好きなのだ)、

私はこれはダデス渓谷のことなんじゃないかと思っている。



アハメッドがお友達のローズショップに連れて行ってくれた。

お友達はいかにもアフリカンと言った感じ。

黒い肌にニカっと白い歯が浮かぶ。



バラの花びらをほぐして蒸留し、ローズウォーターを作る。

これはもちろん肌につけても良いし飲んでも良いらしい。

日本ではあまり見かけない商品。

お土産用に何点かコスメを買い、併設されてるカフェでミントティーを入れてもらう。

ローズウォーターをお醤油をたらすくらいちょこっと入れて飲む。

「とても体に良い」と、くいっと飲みながらアハメッドは言った。



夕方ようやくワルザザードの街に着く。

ここにある世界遺産アイト・ベン・ハッドゥは、

「グラディエーター」など多くのハリウッド映画などのロケ地として有名な所らしい。

町にはオスカーの撮影スタジオなどもあり、かなり経済的に潤っている町とのこと。



今夜の宿はそのアイト・ベン・ハッドゥのすぐ近く。

見学は明日にして、今日は夕方の外観だけを望む。




↑夕日に染まるアイト・ベン・ハッドゥ



近くに友達の絨毯屋があるとかで連れて行かれる。

正直「げ、また絨毯…」と思った。

またまたいろんな絨毯が出て来て今度はとりあえずうんうんと見ていたが、

「安くしとくよー」とそこのおじさんに言われて、

かなり申し訳ない感じでアハメッドに「…カーペットはうちに必要ないんだけど…」と告げた。



アハメッドは「うーん」という感じで「すごい良いものだよ」と言ってきたけど、

私は「とりあえず一晩考えさせてくれ」と店を出た。



宿まで向かう間、

「あの絨毯はね、ベルベルの女性が2~3ヶ月もかけて手仕事で作ったものなんだよ。」

と懇々と説明される。

「僕は良くない物を進める人からはあなたをプロテクトする。

でもあなたは素晴らしいカーペットをここで安く買う事が出来て、

ベルベルの女性はそのお金を得る事でその子供達も潤う。

あなたもカーペットは思い出になるし、双方にとって良いと思ったんだ。」と言う。



「どこまで真に受けたらよいのかな…」とぼんやり思いつつ、

「わかったよ」と答え今夜は別れた。