モロッコラグの毛糸ができるまで
2016年と2018年に、
モロッコのラグ作りの取材に行った時のものです。
ラグの毛糸がどのように作られているのかご紹介いたします。
まず羊の毛を刈った後、洗浄して綺麗にしてから
カーディング(とかす)作業をします。
鉄の突起が付いた板を擦り合わせて、
毛をほぐしていきます。
きれいなふわふわになりました。
この状態になったものをよって糸にしていきます。
片手で毛のかたまりをたぐりながら、
片手で糸巻きをコロコロと回して糸を巻いていきます。
少しやらせてもらったけど、めちゃめちゃ難しかった!
こうして毛糸が完成。
ここまででもかなり手間がかかっています。
次の写真は出来上がった毛糸の束。
ちょっとわかりにくいですが奥の白い方の毛糸が手つむぎ。
ふわふわとした質感です。
手前の見た目的に均等に揃った毛糸は機械つむぎ。
手触りは手つむぎに比べて少しゴワゴワしています。
市場に出回っているラグは、
ほとんど機械つむぎではないかと思います。
工房から直で買うか、専用工房を持っているお店だと、
手つむぎかどうかわかりますが、
普通のお店だと見分けるのは難しいと思います。
ちなみに絨毯づくりに関わる女性が、行う工程は以下の通り。
①洗う
②カーディング(とかす)
③よる
④織る
以上の作業をやる事で、やっと一枚のラグが完成します。
毛糸ができたら染色していきます。
この工房は草木染めで染色をする工房でした。
よく絨毯屋の常套句として、
「これは草木染めだよ!」と言う事がありますが、
モロッコのラグ全体で草木染めのものは5%以下。
草木染めの工房の数は取材時の時点で3件との事でした。
この工房の毛糸は草木染めと思えないほど
鮮やかな色のものばかりでしたが、
ここまで色を出せる技術を持った工房は他にないそうです。
まずはミョウバンで三日間毛糸を煮ます。
ミョウバンで煮る事により毛糸の毛が開いて
染料が定着するのだそう。
次は色を入れていきます。
使う染料は赤色は茜という植物を使います。
次は現地の言葉で「タクボツ」という植物。
ベージュの色になるそうです。
次はウェルドという植物。
黄色になります。
青色だけは色の定着が難しく、植物のインディゴを使う場合もあるが、
化学染料を使う事もあると言っていました。
これらの染料を混ぜていろんな色を作っています。
染料で煮ていきますが、15分くらいで色が付くそうです。
しっかりと色を定着させるには3回煎じないとだめだそうです。
染めた毛糸は干して乾かします。
以前はモロッコでは草木染めが一般的でしたが、
化学染料の方が安価で簡単に染まるため、
草木染めの技術は廃れていきました。
この工房は伝統技術を守るため草木染めをやっているそうです。
草木染めのメリットとしては、
・ナチュラルな原料を使っていること
・色合いが優しいこと
・伝統技術を守る
・化学染料で染めた後の水などを川に流すと環境に悪い
などが挙げられます。
ラグを一枚織り上げるのにこれだけ手間がかかるので、
草木染めのラグは高額になります。
メズィヤーン モロッコでは草木染めのラグは扱っていませんが、
化学染料のラグも草木染めほどではないにしても、
手間暇はかかっているものです。
今回はモロッコのラグ製作の背景に
このような段取りがあるという事をご紹介いたしました。